たとえば、合唱コンクールとかで同級生とみんなでバーッと歌ったりするじゃないですか。あれってきっちりみんな……これ、人間的には不可能なんですけども。寸分違わず同じタイミングで一斉に「あー♪」って同じ音程、同じタイミングで出すと、音ってそれぞれがマスキング。かぶせ合っちゃって、逆にそんなに太くは聞こえないんですよ。合唱感は実は出ないんですよ。
その証拠に、あれってやっぱり微妙に音程がちょっとずれて歌っている子がいたり。「せーの」で歌うんだけど、ちょっと遅れて入っちゃったり。急いでメトロノームよりも早く入っちゃったりとかする子がいるのでずれるわけですよね。縦軸、横軸が。そうすると、ああやって合唱っていう音像になるんですよ。1人で歌っているのと全然違いますよね。音の太さと広がりと。もしかしたらPAスピーカーもいらないぐらいの迫力があるわけで。あれはね、やっぱりずれているからなんですよ。
あとは、ロックの評論家の方が言われていたのかな? 音楽評論家の方かな? エンジニアの方かな? ちょっと覚えていないんですけども。レッド・ツェッペリン、僕は好きなんですけど。レッド・ツェッペリンがなんであんなにかっこいいか?っていうと、それは全員がずれているからって言っていたんですよ。「ああ、なるほどな」って思って。ジョン・ボーナムの独特のリズムがあって。で、ジミー・ペイジはヘタウマと呼ばれているギターで。で、ロバート・プラントはブルージーに感情にまかせて歌うので、絶対にその音程やら縦のラインって合うはずがないんですよ。そこがお互いをマスキングしない、隙間隙間にそれぞれが出たり入ったりしてくるので、立体的に、しかも太く聞こえるというのがレッド・ツェッペリンの秘密なんだというね。